●棕櫚の素晴らしい特性

棕櫚はヤシ科しゅろ属の常緑高木で、枝分かれしないで、まっすぐ天に向かって伸びていきます。棕櫚ほうきはその幹の部分を包み込むように付いている棕櫚皮(繊毛のついた黒褐色の皮)を使用して作ります。

 この棕櫚皮は湿気や水に強く、その昔は魚網や田植え縄、つるべ井戸の縄、飲み水の浄化ろ過材として使われていたそうです。今でも棕櫚縄は竹垣などを縛るのに使われています。また、棕櫚皮を裏床に使った畳もあり、腐りにくく、湿気に強いということで定評があるそうです。普通の植物繊維は水に触れると腐りやすくなりますが、棕櫚皮の繊維はそれ自体の油分により水を寄せつけにくくする効果があり、その繊維は非常に強く、柔らかく、微細ですので、ほうき・たわしなどのお掃除道具の素材としては、耐水性と耐久性に富んだ、願ってもない大自然からの贈り物なんです。

●棕櫚ほうき(棕櫚製品)のススメ

 この素晴らしい特性を持つ棕櫚皮で作った“棕櫚箒まごころ”は、1本に約30〜40枚ほどの棕櫚皮を使用しており、職人の手により、皮の選別・玉結い・取付け・毛梳き・手洗い(リンス)・乾燥・仕上げ作業を経て誕生します。非常に柔らかな風合いで、目に見えにくい小さなほこりも舞い上がらずに取ることができます。カーペットに付いたペットの毛やワタくずなども掃除機とは違い、カーペットを傷めることなくきれいにとることができます。また、微細な繊維が畳の目や板の間の溝にもしっかり入り込み、傷をつけずに掃くことができ、また繊維自体の油分がワックスとは違うつやを出してくれます。

 また、棕櫚ほうきには“鬼毛ほうき”というものがあります。鬼毛とは1枚の棕櫚皮の両端からわずか2〜3本ほどしか取れない特に引きの強い繊維です。多少太めの繊維ですが柔らかくコシがあり、繊維自体のしなりを利用して軽く掃くことができます。

 棕櫚ほうきの使い方は、かるく横によせるような掃き方が良いです。あまり押し付けるように力を入れますと毛先にクセがつきやすくなりますので、毛先を生かした掃き方をしてください。また末永くご使用していただくためにも日々のお手入れをお勧めします。水に強いので汚れたら洗うことができます。玉結いをしている針金の部分を濡らさないように水洗い(洗剤は使用しません)します。水洗いの後、リンスをするとクセがとれ柔らかさが戻ります。仕上げに、つばき油をたわしなどに数滴付けて毛先を梳くように形を整えます。適度な油分が補われ、ツヤが蘇ります。乾かす際は必ず陰干しをしてください。お手入れ次第で、皮ほうきの“棕櫚箒まごころ”で約20年、鬼毛ほうきで3〜40年ご使用いただけると思います。

 余談ですが、棕櫚ほうきは最初、畳で使用して、毛先が少し減ったら、廊下を掃いて、また減ったら玄関などの土間で使用するというのが昔からの言い伝えらしく、これを「棕櫚ほうきの三段活用」と言うそうです。でもほうき屋から言わせていただけば「ほうき(・・・)屋泣かせ(・・・・)の三段活用」ですよね。

とかく使い捨ての世の中において、清掃用品も消耗品と見られますが、どうか末永く育てていただき、天寿を全うさせていただきますようお願い申し上げます。


伝統の手作りは 現代もなお生かされいる、よいものは不滅です     福岡県行橋市  株式会社 瀧商店