五右衛門風呂、若い方にいっても、何それ?というだろう、
昭和30年代までは確かにあった。

当時どの農家にも風呂があった、どの風呂も五右衛門風呂に限られていて、
ほかの形の風呂などなかった。

鉄でザラザラ鋳物の生地が肌をなで触れば熱くて、
足元は直焚きなので底板を逃がさないよう注意深く入ったものだ。

幼子は恐さを知ってか、爺ちゃんに抱かれてぴったりくっついて
このときだけはいい子になった。





もうないだろう、いいえ、
五右衛門風呂は今もなお受け継がれています。


畑仕事を終えた夕暮れに、
窓格子の外で母親が薪を焚いていた。

湯加減は?ときいている、丁度いいよと応えるけれど、
ほんとうはお湯が熱くて熱くて,それでも丁度いい。

続いて父ちゃん続いて兄ちゃんがリレーのようにいれ変わる、
最後に冷めかけたお湯に入るのはいつも母ちゃんだった。

あの熱湯がちょうどいいよといった爺ちゃんの心が今になってようやくわかった。

ひとり湯船に浸かったとき、あの日の五右衛門風呂がよみがえってきた。
    

by Syuichiro.Taki   in Yukuhashi Fukuoka
2001/10/08
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